『隔ての砂原』ベースキャンプに居を構え、昼夜を分かたずひたすらに絵を描いているアイルーがいることをご存じだろうか? 彼(彼女かもしれんが)の名前は作中明らかにされておらず、俺のぼや~っとしたモンハン知識の補完のためにお世話になっている『モンスターハンター大辞典 WIki』の世界観/禁足地調査隊のページにも書かれていない。そのためどのようにお呼びすればいいか困ってしまうところだが、便宜上今回は彼ら(後述するが実は一匹ではない)のことは"画家アイルー"と呼ばせていただくことにする。
画家アイルーが描くものは大きく立派に実ったドスヘダテアロエや遠く幾重もの空気の層を挟んだ先にそびえる風吹き山など、隔ての砂原の中でも特にベースキャンプ周辺で見られる静物や風景だ。
ベースキャンプ内の"アトリエ"に立つボードに貼られた絵は6種類。エリア7から眺めた風吹き山、ベースキャンプ、蒼雷晶の結晶、ドスヘダテアロエ……っと、右上と左上はありゃ何の絵だ?(◎_◎;) 左上はアザミのような何かの花、右上は色合い的には蒼雷晶と何かのように見えるがかなり混み入っているために全体の形がよく見えず具体的な場所もわからない。
俺はこれらの見事な絵を眺めてそのモチーフになったゲーム内の実物や実風景の方にも興味が湧いた。元々知っている植物や風景もあらためて本物をじっくりと観察したいと思ったし右上の正体不明の景色や左上の植物の詳細も気になる。そうと決まればさっそく隔ての砂原へ出て行こう。今回は久しぶりのフィールドワーク回である。
俺はまず一番わかりやすいところとしてベースキャンプの様子を撮影した。普段あまり頭上を見上げることが無いので気にすることもないがベースキャンプ内には実はとんでもない大きさの布が張られている。外界からやってきた禁足地調査隊にはちょっと雨宿りする時のための都合の良い軒下などない。この天幕こそが雨や雹などの厳しい天候の下で唯一調査隊の面々を守ってくれる心強い存在なのだ。
お次は蒼雷晶の結晶。『フォトモード』を使ってまじまじと観察して初めて気づいたが蒼雷晶の結晶って大きな青い鉱石の塊じゃなかったんだな……。てっきりさまざまなゲームにありがちな"クリスタル"的な角柱のような形なんだろうなというイメージでいたがまさかこんなに緻密でギザギザとした鉱物だったとは。この独創性豊かなデザインは人が作ろうとして作れるものではない。まさに自然の神秘である。
続いてドスヘダテアロエ。画家アイルーの絵を見るにヘダテアロエにしては葉の数が多いということに気づき、ドスヘダテアロエを見てみたところ思った通りのドンピシャの形だった。俺はアロエなる植物を食べたことがないのでよく知らないのだがあれってギザギザの葉っぱ部分をそのまま食べることはできるのだろうか? 絵画と同じ角度で撮影するためにまじまじとドスヘダテアロエを見ているうちになんだか不思議と美味そうに感じてしまい食用にかなうものなのかどうかちょっとだけ気になった^^;
こちらはエリア7から眺めた風吹き山。"『ワイルズ』と言えばこれ"と言っていいような象徴的な景色である。この黄金の大地や遠くにかすむ風吹き山を見ると『モンスターハンターワイルズ』の初報となった2023年12月8日のアナウンストレーラーを観た時の興奮が今でも思い起こされる。『モンスターハンター』シリーズ20周年を前にそろそろ何か来るのでは、と予想されていた中ではあったけどあれはテンション上がったな~。それからもう1年半も経ったと考えるとそっちの方にもびっくりしてしまうが(苦笑)
そして火薬草。恥ずかしながら俺はここで初めて火薬草という植物の実物(?)を見た。特徴的な形と色の花。ボード左上の植物は火薬草だったのである。長らく俺のイメージの中の火薬草はへにょへにょとした赤い葉っぱ(アイコンのアレ)だったのだがここに来てついに改めることとなった。当たり前と言えば当たり前だが普通に緑色の葉っぱでした……。似たような形の植物に流水草があるのでそちらも一緒に覚えることに。いや~勉強になりました^^;
火薬草を撮影した後、次に俺は思いがけないものを目にしてびっくりして腰を抜かした。フォトモードを終了し何の気なしに背後を振り返るとそこにはオリーヴァでもニンジャもアルマでもない、まったく予想だにしない者の影があったのだ。
おっ、お前は……画家アイルー!? いったいなぜお前がこんなところに????? しかもよく見るとベースキャンプにいるヤツとは毛色が違う。画家アイルーは一匹じゃなかったのか。画家アイルー(白)は俺の背後に立ってもの凄い勢いで筆を走らせた後、手元の絵を頭上に掲げておそらくその絵が完成したことの喜びを全身で表した。
そうか、そうだったのか……。今まで俺がフォトモードにて"撮影"したと思っていたものはすべてお前が一生懸命に描いてくれた絵だったのだな。そもそも『写真』が存在しないモンハン世界。"フォトモード"などと言って普通に受け入れていたがよく考えてみれば確かにおかしな話だった。普段ほとんどフォトモードを使わずにパソコンのスクリーンショット機能で画面を撮っていたのでまったく気づかなかったよ。
ということはあれか。俺が珍しくフォトモードを使って『歌姫』を撮影し感動のあまり昇天(?)していた時にも傍らにはお前がいて、俺が必要以上に撮りまくった歌姫の姿をせっせと描いてくれていたということか。その節は大変助かったが恥ずかしいからいるならいると言ってほしかったぞ(苦笑)
そんな世間の皆様には「今さらか^^;」と思われても仕方がないような衝撃の真実に対面した後、俺はついに最後の一枚である"右上の謎のロケーション"を探し始めた。なんとなく見たことがある場所のようなそんなでもないような……。そもそもあれは風景画で合っているのだろうか。遠くから薄目で見てみると荒ぶるレ・ダウの姿にも見えなくもないがそれはカラーリングが似ているというだけの話のような気もする。
俺は他の5枚のモチーフがすべてベースキャンプの周辺に集中しているという共通点を元にベースキャンプからほど近い辺りを走り回って最後の絵の場所を探した。そして――
あった! 多分ここだ! 30分ほども隔ての砂原をほっつき歩き、俺はエリア3にある蒼雷晶と岩の壁が画家アイルーの描いた絵とそっくりであることを発見した。特に蒼雷晶の特徴的な分布の形が一致しているように見えるのだがどうだろうか。完全に俺のイメージ先行で似たようなロケーションを探していたに過ぎないので思い込みの可能性は十分にある。自信はあまり無いが一旦これでいかせていただきます!
最後に俺が撮った6枚を元のボードと同じ配置でコラージュ画像にしてみた。う~ん、流石は"驚異のグラフィック表現"と持てはやされた『ワイルズ』である。適当にパシャパシャ撮ってベタベタ貼っただけなのにいい感じに見える(ような気がする)
今回の件で画家アイルーにはベースキャンプにいる一匹の他にも"従軍カメラマン"のように俺に付き添って描いてくれているヤツがいることを知った。つまりは俺が"撮った"ものが彼らが描いたものとイコールということになるわけだが、それとは別に他フィールドの風景や静物の絵を新たにボードに貼ってくれはしないだろうか? 隔ての砂原の一部分を切り取った作品だけでも本当に素晴らしいので、ぜひ彼らが描いた『緋の森』エリア15や『大集会所』などまた異なる場所の景色を見てみたいものである。