彼の理想の田園へ

日記と妄言、活動記録。

ユーザーブロマガから来ました(2021.10.08)

 初めまして、葉締陽佳です。2021年10月7日にニコニコが提供していたブログサービスのブロマガのうち、一般ユーザーが利用できる「ユーザーブロマガ」が終了しました。そのため、今回からはてなブログで書いていこうと思います。

 

 ブログの内容はこれまで通り、日記やイベント参加記録、その時にハマっている物事などについて書いていくと思います。私は自己を含めて過去のことを振り返ることが大枠での趣味です。本当に暇になった時や泥酔した時などに自分で自分のブログを読むことがあるので、誰かに対して毒にも薬にもならないにしても未来の自分だけでも楽しませられるように書き残していければなと思います。

 

 ニコニコ側からの丁寧な手引きもあってユーザーブロマガの内容を(おそらく)そのままはてなブログに移すことができましたが、その反面、はてなブログならではの設定や機能などについてはまだまったく把握していません(でも全体的に使いやすそうで安心しています)。なんとなくブログタイトルも変えたいなと思っていますがそれも思いついていません。これらについてはスパッと一回で完成させるのは無理そうなので、いつの間にかじわじわと好みの形にしていこうと思います。よろしくお願いします。

 

 おわりに。蛇足ですが、ユーザーブロマガが本当に終わっていました。おぉ...となりました。ありがとうございました。

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■サヨナラ...サヨナラ...

ユーザーブロマガの「最後の記事」を沢山読んだ話と自分の最後の記事の話(2021.10.03)

1. はじめに
 9月末後半から10月にかけていくつかの台風を過ごし、その度に徐々に残暑を取り除かれていくような今日この頃です。日々の気温は波打つように不安定ですが、その波もいずれは収束して深い秋へと向かってゆきます。この時期の微妙な季節感は好きですが、逆に暑かったり寒かったりして着る服に困ってしまいます。しょうがない。

 10月と言えば、今年は祝日がありません。初めて気づいた時にはがっかりしたものですが、これもまたもう心が受け入れました。服装に困る微妙な気温帯も祝日の無い1か月も普通に考えたら悩ましいことに思いますが、私は頭がおかしいのかすぐにえもいわれぬおかしな楽しさを感じるようになります(「えーマジかー!・・・まーいっか!」みたいな感じ)。これが「エモい」ちゃんですか。思うに、「楽しい」という評価は内容そのものにではなく、心が動かされる状態へ向いているのではないでしょうか(動く心の程度による)。まとまりのないこの気持ちを何とか文章化しようとしていたら謎ポエムになりましたが、何にせよ「心づくしの秋」が来たのは確かなわけです(雑)。


2. ユーザーブロマガの「最後の記事」を沢山読んだ話(本題)
 いよいよ10月7日にニコニコの一サービス「ユーザーブロマガ」が終了します。告知から約半年経ちましたが、告知直後はユーザーブロマガの新着欄はブログ移転(or閉鎖)を知らせる記事で埋まっていましたし、その後も現在までぽつぽつとあまり途切れることなく同内容の新着記事が上がってました。私は単純に「ブロマガを利用しているユーザーってこんなに多かったんだ」(小並感)と思いました。

 おそらくですが、ユーザーブロマガ閉鎖に反応した全員がコンスタントに記事を投稿し続けていたわけでは無いと思います。それくらい多くの「移転のご挨拶」記事が投稿されていました。かく言う私もまた、今年に入ってから今までもほぼ投稿していません。しかし今回の件によって「サービス終了」という一度しか訪れない大きなトピックがユーザーの行動を呼び起こし、結果的に終わり際にあるサービス自体が盛況になったのだなあと思いました(普段からめちゃくちゃ盛り上がっていたらごめんなさい)。なんだか複雑な気持ちです。

 そのような中にあり、私自身も現在まで利用しているサービスの終了ににわかに安っぽい寂しさを感じたため、さまざまな人々の「最後の記事」を読んでみました。各ユーザーによって書いている内容のジャンルは細分化されているためこれまでそれほど多くの記事を読むことはありませんでしたが、別れの挨拶ばかりは人類平等に広くエモさを喚起するのでしょう。とにかく上がってきた順から読める分だけ読みました。申し訳なくも当然ながら、各ブログ自体ほとんど初見でした。

 結果として、この取り組みは非常に充実したものとなりました。読んできた記事はそれぞれ、短い挨拶と次の移転先ブログへのリンクが記されたもの、これまでのユーザーブロマガと自らの歩みを感傷的に綴ったもの、数年間放置し続けたブロマガの終わり際に「サ終」というトピックをようやく見つけ、自分の文章を投稿するという楽しみに気付きながら閉鎖していくものなど、大枠は共通しつつも人それぞれ、ユーザーそれぞれの記事を読むことができてとても面白かったです。中には一文だけ書いてあまりにも簡素に終わらせる方もいましたし、もっと言えば特に何も記事を投稿せずにサービス終了を迎える方もいることと思います(というか大部分の方々はこれではないかとなんとなく思っています)。執筆時点ではサービス終了までまだ4日ありますので、まだ書いていない人にはぜひ書いてもらって、もっと読ませてほしいなと思います。


3. おわりに(自分の最後の記事の話)
 私はとにかく過去のことを調べたり振り返ったりすることが好きな人間です。それは自分のことについても同様で、自分がTwitterやブロマガに書いた内容も数年後、本当に暇になった時や酒に酔った時などに読み返しています。そのため、本当にどうでもいいことでも数年後の自分へ送るコンテンツとしてなるべく丁寧に書き残すようにしています。特に感情的な部分は一瞬で忘れてしまうので、後から「この時はこんな風に感じていたんだー」と他人事のように読んで楽しむことができます(なおだいたい黒歴史です)。

 それらをいつでも気軽に閲覧できるWeb上のサービスはありがたいと思いますし、ユーザーブロマガひいてはニコニコのサービス全体に感謝しています。私がかつて思春期だった頃からずっとお世話になって来ました。自分の過去を振り返ると、だいたいニコニコのことも一緒に出てきます。

 ユーザーブロマガが終わってしまうことは寂しいですが、この間、個人的には「終わること」への心の動きを楽しむことができて二度おいしい!みたいにも思いました。勢いで書いてしまいましたが二度ではないですね。寂しい、寂しいから...(念押し)。

 いつもの癖でダラダラと長く書いてしまいました。最後に本ユーザーブロマガ『花とチイラとソーナノの楽園。』も閉鎖することをお知らせします。いつだったかのポケモンの構築記事は4000弱くらいの閲覧数があったので、そこら辺についてだけは自意識過剰にも「お読みいただきありがとうございました」と言えるのではないでしょうか。では、さようなら。我もまた、この街を去ろう...(僕はキメ顔でそう言った――)

【ポケモン】第三世代ROM(RSEのカセット)の電池交換をしました(2021.09.05)

1. はじめに
 今年は8月の終わりとともに急に気温が下がり、すっかり秋の寂しさを感じる時期になりました。2021年ももうあと4ヶ月弱。このところ労働が厳し過ぎて何事に関しても停滞気味ですが、なんとかまたささやかな趣味に遊びに少しずつ進んでいければ良いな~と思います。


2. ポケモン第三世代ROM(RSEのカセット)の電池交換をしました(本題)
 僕は『赤緑』から『剣盾』までポケモンシリーズを一応全世代やってきました。どの世代もめちゃくちゃ好きですが、思い出補正込みで一番のお気に入りを選ぶとするとそれは『RSE』になります。常に最新作に夢中になりながらも、なんだかんだで僕の深層心理の所在地はいつまで経ってもホウエン地方です。

 RSEは僕が小学生の頃に初めて遊んだゲームです。基本的に当時は何度もリセットしてストーリーをやったり秘密基地を作って遊んだりしていましたが、子供の頃は幼くてできなかったポケモン図鑑完成やバトルタワー制覇、GBA限定の対人戦などを今になってやりたくなったので最近買い直しました。

 しかしながら、ボタン電池を内蔵することで様々な素敵機能を搭載したRSEのROMは、ことごとく「電池切れ」という大問題を抱えています。電池が切れるとゲーム内の時間が進まなくなり、きのみが育たなくなったり曜日ごとのイベントが発生しなくなったりします。これでは楽しみは半減してしまうので、今回はちょっと頑張って自分で電池を交換しました。


■小学生当時、突然表示されたこの不気味なメッセージに戦慄した覚えがあります


3. 実際の工程
 ここからは僕が実際に行った作業内容ですが、別に自分で考えて工作したわけではなくネットで調べて出てきたありがたいブログを100%参考にしてそのままやりました。そのため特に新しく画期的な内容はありません。参考にさせていただいたありがたいページはこちら(リンク)

 今回用意した物は我が思い出のサファイアROM、ボタン電池、ビニールテープ、マイナスドライバー、軍手です。
■今回使った物(後述しますがここ爪切り(?)が加わります)

 GBAソフトに使われているネジのネジ山の形はY形ですが、近所のホームセンターにY形ドライバーが売っておらずムカついたのでマイナスドライバーを買ってきて代用しました。雑に扱ってネジ山を潰してしまうと詰むので慎重に扱いました。




■今回使用した極細のマイナスドライバー。なんとかフィットしてくれました。

 首尾よくネジを外して特徴的な青のカバーを外すと、中には小さな基板が入っていました。ずっと前から知っている宝物なのに、大人になってから初めて見た中身の基板はとても軽くて脆そうに感じました。


■"2002"...? 2002ってなんだ...?(遠い目)

 手の脂が付かないように、申し訳程度の軍手をつけて作業を始めました(でも逆に軍手の白い毛が残りそうでダメかもなとも思いました)。まずは製造時にセットされたボタン電池を取り外します。電池交換を行うことを想定されていないつくりなので、プラス/マイナス極にはばっちりと金属が貼り付いています。しばらく時間がかかりましたが、隙間にマイナスドライバーを挿し込んでなんとか金属片を剥がしました。


■電池がかなりバッチリ固定されていたので、作業中に変に力が入って基板全体を2つに割ってしまいそうな怖さがありました。

 電池を取り外した後、グニャグニャに曲がった金属部分をなるべく真っ直ぐに伸ばしました。本来この作業はペンチを使うとスマートに行えるようですが、ペンチを用意し忘れてしまったので急きょ部屋にあった爪切りで挟んで金属を均し、なんとか難を逃れました。この方法を思いつかなければ作業が完全に止まってしまうことになっていたので、この発想は我ながらファインプレーだったなと思います。

■爪がまったく関係無い場面で初めて爪切りを使った貴重な瞬間

 最後にビニールテープを使って、新しいボタン電池と金属部分をくっ付けて固定します。ここでしっかり密着させて固めておかないと通電しなくなるので、より丁寧にテープを巻きました。




■「なんかエロ漫画で幾度と見てきた"黒のり"みたいだな...」というしょうもない思考が脳をかすめる中、慎重にテープを巻きました。

 そして...完成! 約20年もの時を超え、僕の手の中にある雄大ホウエンの空と海と大地に時間の流れが戻りました。きっとゲームの中の人々も喜んでいると思います。

■明らかに素人の手が入った電池部分。「†黒棺†」と名付けます。


4. おわりに
 GBAカセットを開いて中の電池を交換するという今回の作業、素人がやって大丈夫かという気もしていましたが親切な先輩がブログに手順を残しておいてくれていたおかげでとても簡単に済ませられました。こんなところで近年忘れがちなインターネットの偉大さを感じました。念のためゲームを起動して確認しましたが、もうタイトル画面の後にあの電池切れのメッセージが流れることはありませんでした。子供の頃に「電池が切れた後のためにメッセージを用意しているなんてすげー!」と驚いたことを思い出しました。

 今後はいつ時間が取れるかわかりませんが、また久し振りにこのゲームで遊ぼうと思います。今やったらまた新しく感じることがあったり、忘れていたことを思い出したりできそうで楽しみです。あと現行の仕組みと全然違っていて苦労しそうですが、できる範囲でPTを組んで対戦環境も整えてみたいなと思っています(対戦相手を見つけるのも苦労しそうですが...)。でもやっぱり、ホウエンっていいなー。

【日記】「初音ミク・クロニクル」に行ってきました(2021.07.22)

1. はじめに
 私は仕事以外で滅多に外出することが無い人間です。昨年から世間ではさまざまあり(無駄に言葉を濁す)、三度のコミックマーケットが中止・延期されました。その日暮らしで無計画に生きている私にとってほぼ唯一行くことが決まっている予定がコミケだったので、このところずっと割とどうしようもない喪失感に襲われています。次のコミケ開催予定日は2021年12月。無事に行われてほしいと思います。
 そのような私が久し振りに事前にチケットを買い、カレンダーに印をつけて参加したイベントが「初音ミク・クロニクル」です。アート展です、なんかオシャレそう。アート展だぞ。場所は江東区品川グランドセントラルタワー。綺麗な建物でした。品川は微妙に遠く、また普段コンビニくらいにしか入らない人間なので会場入りするだけで緊張して疲れてしまいました。でも行って良かったな~と思えたので日記に残しておきます。


2. 当日の流れ
 品川までは微妙に遠いですが、適当に快速電車に乗って寝ていたら着いたので楽でした。2021年の7月22日は海の日で、木曜日ではありますが祝日です。そのため多少は人の出も多いのだろうかと思っていましたがあまりそんなこともありませんでした。時間的には昼過ぎだったので、電車も程よく空いていました。品川駅周辺は1,2回しか行ったことがありませんでしたが、初音ミク公式Twitterがめちゃくちゃ丁寧に誘導してくれたのでスッと目的地まで歩いていけました。これが無かったら終わっていたかもしれません。駅を出てから若干距離あるからね(文句)。そんな感じであっさりと現地へ到着できました。
■入口にあった看板。いきなり出てきた。


3. 写真とか感想とか
 会場に入ってから出ていくまではもう様々な思いが胸を去来し脳を焼いていたので、はっきり言って具体的にこれがこうだったみたいな話は思い出せません。「感動した」しか言えない。これはガチ。それくらい普通にやられました。普通にもう一度行きたいです。

 当企画展は当たり前ながら基本的に撮影NGでしたが、その中で撮影OKの展示がありました。「初音ミク・クロニクル」メインビジュアルの複製原画や等身大立像です。
■「きれい...(小並感」しか言えない複製原画。でかい。

■まさに""現界""した初音ミクさん。伝わりづらいがめちゃくちゃでかい。

 これは実際に行ったから言える感想なのですが、素人でもでかい物を見ると安直に感動してしまうな...という。複製原画も等身大立像も、大きくてかつ緻密で、それだけで圧倒されてしまいました。特に立像の方は目玉展示過ぎて「むしろこれ撮影して持って帰っていいの!?」と思いました。"本物"を前にして僕のチャチな写真からは伝わらない迫力と繊細さを感じました。ぜひ会場で実物を見ていただきたいと思いました。

 その他の展示について、あまり具体的に言ってはいけないような気もしますが「あなたのメモリーメロディー♪」という企画が個人的に胸に沁みるものがあったので少し書いておきます。これは事前にファンから思い出の曲とその想いを募り、その内の数曲を紹介するというものなのですが、これが意外と"おじが唸る"チョイスだったのが印象的でした。こういう投票はなんとなく近年の有名曲が入って来やすい気がしていますが、選ばれて展示されていた曲は僕が特によくボカロを聴いていた2007~2014年くらいのものでした。
 もう直撃も直撃くらいのレジェンド作品達の"サムネ"がこれまたでかいボードになって目の前にあり、その周りには多くのファンの曲にまつわる思い出メッセージです。これにやられない人間がいるだろうか(反語)。マジか...と。あまりに致し方ない気持ちになって「いやぁ...(感嘆)」という声が漏れてしまいます。そのような限界ムーブを禁じ得ないほど「あなたのメモリーメロディー♪」は個人的に突き刺さる展示でした。

4. その他
 展示会場を出た先には物販コーナーがありました。金銭的にまったく余裕が無いので事前に「一品だけ...一品だけ...」と決意していましたが、安かったので結果的に二品買いました。
■実用性を重視(実用するかは未定)

 出入口付近にはイベントにありがちな記念のメッセージボードがありました。多くの神絵師兄貴(姉貴かも知れません)達による神イラストが描かれていてこれもまた現地でしか見られない素晴らしいものでした。せっかくなので僕も端っこの方に感謝の弁を書いておきました。ほんま感謝しかないで...。
■「ありがとうございました」です、本当にこれです。

■出口でいただいたなんか入れるやつです。これもただただ「ありがとう」です。


5. 終わりに
 近年あんまりボカロシーンを熱心に追いかけていないにも関わらず、このような企画展にだけ"ファン面"をして行くのは申し訳ない気持ちでした。今でもそうです。でも懐古厨なりに多くの新たな感動を得られたので明らかに行って良かったなと思いました。しかしながら、新たな感動を生み出す新たな試みも現行のファンの支えなしにはあり得ないのかなという考えも当然あります。今回のイベントがきっかけでモチベがめちゃくちゃ上がったので、今後は積極的にシーンを追ってお金を払っていきたいなと思いました。ミクさんと同じく常に先の未来を見ていくというね...(キメ台詞)。

【日記】弓塚さつきという女 -『月姫』21年目の初見感想-

1. はじめに
 本題とはまったく関係ありませんが、ユーザーブロマガは2021年10月7日(予定)をもってサービス終了します。この告知があった直後にユーザーブロマガを検索してみたところ、非常に多くのユーザーがブログ移転をお知らせする記事を書いていました。僕もきっといずれ移転すると思います。何事についても後回しにする癖があるのでブロマガ閉鎖直前になるかもしれません。内容はともかく、過去の自分がどのようなことをしていたのか振り返りたい性分なので日記が読めなくなるのは困りますからね。

 そして今回、サービス終了が予告されているユーザーブロマガに新しい限界怪文書を投下します。誰もがいなくなりつつある世界に留まって活動を続けることで、気軽にポストアポカリプス的SFを感じることができます。お得ですね。


2. イントロダクション・オブ・本題
 2021年に入ってから『月姫』シリーズを嗜んでいます。初出から約21年経っているとのことで、大変な知名度と人気のあるシリーズです。とか言っといて僕自身は他シリーズも含めてほとんど知らない作品群です。2000年はまだ小学校に入る前でしたし、このようなカルチャーに触れたのもずいぶん歳を取ってからだったので、それはもうまったくのノータッチでした。

 そのような僕にさえ、ことあるごとに視界の端に映り込んでくるところに『月姫』シリーズ(他関連作品)の巨大さが表れていると言えるのではないでしょうか。「なんとなく見たことがあるけどよく知らない」というもやもや感を払拭すべく、この広大なTYPE-MOONという大陸の一端に上陸したというわけです。

 とはいえ、調べてみると原作ゲームは非常に希少かつ高価で、起動する環境作りも困難であるということで現在はニコニコ動画に上がっている実況プレイ動画を観ています。なるべく原作から広く学んでいきたい派なので、コミカライズ版やスピンオフ作品、アニメにも触れたいと思います。しばらく退屈しなそうだぜ。


3. 弓塚さつきという女
 実は前述のプレイ実況動画自体まだ途中までしか観ていないのですが、今回どうしても心に大きな衝撃を受けたエピソードを目の当たりにしたので我慢できず書こうと思います。それはタイトルにもある通り『弓塚さつき』というキャラクターについてのお話です。

 アルクェイドルート、シエルルートを経て、僕の中での弓塚さつき("さっちん"と呼ばれている)の印象は、『まったく重要でないモブキャラ』でした(申し訳ない)。2ルートともに物語序盤でしか出てきませんし、ほとんど会話をすることもない。言ったら賑やかし、特に何もない有彦と同じですよ!そう言ってこの先に乾有彦を襲う壮絶な物語が待っていないとは限らないのでここまでにしておきますが、さっちんにはとにかくそれくらいのチョイ役というイメージを持っていました。だから物語の序盤で彼女が失踪したという話を聞いても、「いなくなっちゃったんだー、どうしたんだろう」くらいの感想しか浮かびませんでした。むしろその他の怒涛の展開に気を取られてさっちんが失踪したことが何を表していたのかまったく気づきませんでした。

 しかし転機が訪れました。物語はいわゆる"遠野家ルート"に入り、秋葉、琥珀翡翠との絡みが多くなりそうな予感がしていた時でした。これ、今でも違和感が強いのですがこの何となく遠野家の面々と深く関わって来るんだろうナ...という流れの中で突如、弓塚さつきがゴゴゴゴゴ......という大きな音を立てながらダイナミックに動き始めるのです(心象風景)。なんと、さっちんとの会話数が急激に増え、その中で彼女と主人公・志貴さんとの間には浅からぬ因縁があることが判明したのです。しかも熱い。傍から見てると「なんて健気でいじらしい娘なのかしら......! ここからどうなっちゃうの......!?」と言いたくなるようなそのさっちんの人間性が披露され、それまでの僕の"さっちん評"がガラリと変わったのです。こいつモブキャラなんかじゃなくとんでもねえヒロインだぜ......という風に。しかもゲーム内でも豪華に特別な一枚絵が挿入されていたので、この部分の製作に明らかな気合が入っていたことがわかります。

■あまりに感動したので絵を描きました。ほんまええ子や......。

 「それじゃあ、私の家はこっちだから。また明日、学校で会おうね」。そんなこんなで彼女のことがよくわかった帰り道のシーンなのですが、この後に例のイベントが起こってしまいました。なんとこのルートでも例外無く弓塚さつきは失踪します。これがあったか~~~ッッッ!!! と思わずバキキャラ化してしまうほど衝撃的でした。だってこれがあることを完全に忘れていたもの。彼女のことを知らない頃は「いなくなっちゃったんだー、どうしたんだろう」なんて思っていたんだもの。これが知ることの苦しみです。なかばさっちんの魅力を知ってしまったばかりに、ここから始まるとてつもない地獄への道に踏み入っていくことになるのでした。

 弓塚さつきはその失踪の前日、遠野志貴を探して"吸血鬼騒ぎ"が噂される夜の街に繰り出しました。その結果、なんやかんやあって吸血鬼と化してしまいます。まずはここが切ない。これまで積年も積年の「志貴さんに近づきたい」という想いの結果、勇気を出して闇の中へと踏み入ってしまったんですね。切ない。そして彼女がまったくの一般人であるばかりに誰も知らないうちにあっさりとやられてしまうのも切ない。当然、物語上ではここまでで数多くの名もなき被害者が出ています。彼女もその中の一人になってしまったのです......。

 その後、僕の語彙力では形容できないほどの壮絶なやりとりがあったのちに弓塚さつきは志貴さんの能力によって死に至ります。そこには例えば悪しき敵役を倒した時のような爽快さなどはなく、ただただやりきれない気持ちでいっぱいの苦渋の決断の結果だけがありました。嘘やん......そんなん嘘やん......。思わず僕は呟いていました。あらゆる超常の現象・能力が渦巻くこの世界にあって、僕は不思議と如何ともしがたい圧倒的な無力感と"詰み"の観念を覚えました。この歳にして胸が張り裂けそうになってもどうしようもなく、独り静かな部屋の中で悶えるしかない僕が息も絶え絶えに詠み上げた一首、

分け入らば すぐ夜むなしく 幸尽きぬ
遠野に見ゆる たそがれの影
                    陽佳


まったく和歌の素養などは無いのですが、あまりのもののあはれに(言いたいだけ)思わずひとりでに頭に浮かんできてしまいました。お粗末。

 話を戻します。このエピソードの何が切ないって、この吸血鬼騒動の被害者が弓塚さつきである必要性はまったく無いという点なんですよね。ある意味で現実に対する非情な誠実さを感じたがゆえに、悲しみを超える苦しさを感じました。別にまったくの善人であっても当然のようにこのような災厄が降りかかることはあるよっていう。

 ここで逆にさっちんに特殊な呪いがかかっているとか、物語的に重要な人物であるとか、そういう前フリがあったらこれほど僕の心に突き刺さることは無かったのではないかなと思いました。まさしく一寸先は闇。弓塚さつきがその勇気をもって一歩踏み出し、長らく凪の状態であった遠野志貴との関係性を加速させ始めてからわずか3日目のことでした。

 救いであったのは最後に志貴さんとさつきの間でやりとりがあったということ、そしてその後の志貴さんに、さつきについての述懐があったということです。これがあることで僕は、すんでのところで突き放されずに済みました。彼らにとってはまったくの救いがない出来事でしたが、読者である僕にはギリギリのところで救いが用意されておりました。この点が、この物語の素晴らしいところと思います。


4. おわりに
 僕はまったくデリカシーの欠片も無い人間なので、さっちんが志貴さんに対して打ち明けた微妙なニュアンスの言葉に「それって"好き"ってことじゃん!? "好き"ってことなの!?」と心の中で叫びながら悶え続けておりました。実際どうなんだろう......安易に"LOVE"ってことで良いんでしょうか? でもそうでもない感じもあったような......己の読解力に自信が無いために判断がつきませんでした。あのさあ! 好きってことならお前がヒロインで良いよ!! ねえ!! かわいいんだからさ!!

■散々語っといてこいつマジ…。

 そのような感じで僕にとっての『月姫』、まだまだ道半ばながら楽しんでおります。のんびりしていると新作も出てしまいますね(2021年8月26日発売)。そこではさっちんはどうなんでしょうか、幸せになれるのでしょうか。そもそも何が幸せの形になるのでしょうか(深淵)。もう物語全体が重いばかりに疑心暗鬼になってしまいます。シエルルートのバッドエンドも凄かったし。

 あとは僕は格ゲーも多少嗜みますので、のちに控えているメルブラ新作ではさっちんの姿がどのようになっているのか楽しみです。ここまで彼女の魅力について長々と綴って来ましたが、実はアルクェイドさんも大好きなのでどちらかは僕にあったキャラ性能だったら良いなーと思っています。つまりはこの2021年、僕にとっては『月姫』シリーズの年になりそうです。いくつになっても新たな作品に手を出していくことは人生を豊かにしてくれますね。これが幸せ、そう幸せ......。


EX. おまけ
 
月姫エンディング後の『教えて!!知恵留先生』のコーナーにスッと出てくる謎の存在を描きました。重いストーリーの後に来るあの雑なギャグ的ノリ、嫌いじゃないしむしろ好き。