彼の理想の田園へ

日記と妄言、活動記録。

【ポケモン】『GOTCHA!』を観た感想【BUMP OF CHICKEN - Acacia】

1. はじめに
 ポケモン剣盾もDLC『冠の雪原』がリリースされ、全世界のポケモントレーナー達がよだれを垂らしながら画面に向かっていることと思います。お元気ですか。もちろん私も楽しませていただきました。詳細は省きますが、"主人公と伝説のポケモンの間で人語を介した濃密な交流があった"という点で今回の物語は特別なものになったなと思いました。ポケモン最高。

 ゲーム本編である剣盾からは少し離れますが、今回私がわざわざ日記に書いておきたいと思ったことは約一か月前(2020/09/29)にポケモン公式YouTubeチャンネルから投稿された
という動画についてです。動画について簡単に説明すると、人気バンドBUMP OF CHICKENの『Acacia』という曲と多くのポケモンやトレーナーキャラが登場するアニメとのコラボレーション作品です。

 この動画はとんでもない人気で投稿から約一か月で1800万回(!)もの再生数になっており、この数字を見ただけでも大変多くのポケモンファンの心に響いただろうことがわかります。かくいう私もこの動画の魅力にシンプルにストレートにやられてですね、初見から3,4回くらいは動画を観ながら涙ぐみつつ声を出して笑ってしまうという奇行を繰り返してしまいました....。不思議ですね。自分でもよくわからないのですが、冗談抜きで心に刺さったのかな(迫真)などと自己分析しております。私は基本的に何に対しても斜に構えるひねくれた性格なのですが、『GOTCHA!』には普通にやられました本当にありがとうございました。

 ......とは言ってもやはり私はひねくれた性格なので、今回は『GOTCHA!』に関して『あのキャラがかっこ良かった!/可愛かった!』『あのポケモンが出てきて嬉しかった!』『ゲームに出てきたあんな表現やこんな物語を盛り込んでくれていた!』『アニメーションの動きが凄かった!』などの感想はほとんど書きません。その辺りのことは既にたくさんの人達によって表現されているので、私の浅い愛情表現は心の中にしまっておこうと思います。本日私が書いておきたいことはその他のことです。


2. 『GOTCHA!』と『スタンド・バイ・ミー
 『
GOTCHA!』が始まってすぐに、"おとこのこが4人 せんろのうえをあるいてる"(赤緑主人公並感)映像が流れます。これは『ポケモン赤緑』の主人公の部屋のテレビで流れていた映像の再現なのですが、それと同時に間違いなく映画『スタンド・バイ・ミー』のオマージュでもあります。開始直後にこの映像をいきなり見せられ「うおおお!!!(大ダメージ)」となった皆さんも多いのではないでしょうか。私はなりました。


■「ぼくももういかなきゃ!」この映画が主人公の思考や
 行動に大きな影響を与えたことを感じさせる名シーン



■4人の男性が線路上を歩くシーン(左:『GOTCHA!』、右:『スタンド・バイ・ミー』)

 
しかしそこで私は気づきました。「そういえば『スタンド・バイ・ミー』をちゃんと観たことがないな」と。そうなのです。"おとこのこが4人 せんろのうえをあるいてる"シーンは映画『スタンド・バイ・ミー』のものであることも、『赤緑』がその映画に影響を受けて「少年の日のひと夏の冒険」をテーマに作られたこと(って色々なインタビューで言われていた気がする※出典無し)も、知ってはいるのに映画自体を観たことがないし、原作も読んだことがないことを思い出してしまったのです。これはいけない。すごくもやもやしました。上記のようなシーンにノスタルジーを覚えて涙すら流したにもかかわらず、実はその元ネタに触れていなかったのです。ずっと昔から「まあ有名な映画だけど言うても古典だし(?)、観なくてもええか...」とスルーし続けていたことを恥じ、すぐさまAmazonのPrime Videoで視聴しました。

 端的に感想を申し上げますと、『スタンド・バイ・ミー』はとても良い映画でした。誰しもそうだと思いますが、少年の日の思い出というものは決して楽しいことばかりではなかったでしょうし、劇中の4人の男の子たちもまた、それぞれにとっての深刻な問題を抱えています。そのため決して明るくて楽しい胸躍る冒険が描かれているわけではないのですが、私が独り静かな部屋で観るにはとても合っていて、「観て良かったなあ...」と思える作品でした。真面目な点もふざけた点も『スタンド・バイ・ミー』については色々思うところがありましたが、話が無際限にずれていくので軌道修正していきたいと思います。

■巨大なタンクからは水が漏れ、まっすぐな線路はどこまでも続いている
 (左:『GOTCHA!』、右:『スタンド・バイ・ミー』)


 『
GOTCHA!』全体の構成を私個人の感覚でざっくり分割すると、「スタンド・バイ・ミー(BUMP OF CHICKEN?)」パート、「これまでのポケモン世界」パートの2つになると思います。『スタンド・バイ・ミー』については前述しました。次に、動画の大半を占める「これまでのポケモン世界」パートについて思ったことを書きたいと思います。

 もちろん私は、全体を通して繰り広げられる素晴らしい躍動感と、多くのファンの思い出を刺激するキャラクターや場面の表現に完璧にやられました。『赤緑』から『剣盾』まで、映像のどのコマを切り取っても幅広い世代にリーチする魅力的なキャラやポケモン、印象的なシーンなどが描かれています。私は特に『赤緑』や『RSE』、『BW/BW2』がお気に入りなのでその辺りのキャラが出てきた時は嬉しかったですね。

 しかしながら、ノスタルジーを刺激されて嬉しくなっていたと同時に一抹の不安も覚えました。「えっ?もしかしてこれって昔からのファンに向けた『今までのポケモンの総集編』なの?」と感じたのです。完全に個人の感想ですが未だに"ポケモンリーグの最後に6匹のポケモンに囲まれたグリーン"がいると「かっこいい!」となりますし、オーキド博士が一番のドアップでしたり顔をしていれば「やっぱりお前なんだよな」となってしまいます。

 それはそれでとても良いのですが、その反面「そこで喜んじゃうしそこで喜ばせちゃうかー(神視点)」という感想が私の頭に浮かんできたんですね。もちろんファンの昔の思い出に語りかけることは全然悪いことではないですし、多くのファンがそれを求めていることです。それでも安易なオタクである私が昔風のドット絵が出てきただけですぐにやられてしまったとき、嬉しさの感情と同時に「簡単で効果的な手法だよな」とか「なにか今"総集編"をやるタイミングだったっけ?」とかいう思いが頭をもたげてきてそりゃあもう自己嫌悪しました。

 ......という完全に逆張りの嫌な奴的感想を並べ立ててしまい既に取り返しのつかない状態なわけなのですが、喜ばしいことに『GOTCHA!』を最後まで観て『スタンド・バイ・ミー』を観て、その後二度、三度と繰り返し観た今となっては私の中の「GOTCHA!」評は『最高』に変わっています。救えないほどひねくれた私のネガティブ感想が最高評価へと振り切れた要因は以下の通りです。

 動画の終盤、再び『スタンド・バイ・ミー』を思わせる4人の冒険シーンに切り替わります。手前から奥へとまっすぐにのびていく線路の上を歩いて行く、上記画像のシーンの続きです。初見の時は、正直に申し上げて「最後まで懐古趣味かよ!」と思いました。


■カメラは上空から4人を映した後、青空へ向けてパンしてゆく

 ここで話がまた映画の方へ行ってしまうのですが、『スタンド・バイ・ミー』は4人の少年の中の一人である主人公が、後年になってこの頃の思い出を小説としてパソコンに打ち込んでいる、というシーンで終わります。立派な家に住む穏やかそうな中年男性が二人の息子に一緒に出掛ける約束について催促されてから、文章を書き終えて満足げな表情で部屋から出て行きます。

 主人公の独白によって他の3人の冒険を終えた"その後"のことについても少しだけ知ることができますが、この4人全員が昔思い描いたような幸せな人生を送っているわけではありません。現在多くを手に入れて幸せそうに暮らしている主人公でさえも「あの時以来、あの3人以上の友人ができたことはない」と語っています。それほどかけがえのない経験だったのでしょう。つまり、主人公にとって『スタンド・バイ・ミー』とは「今も眩しく輝き続けている、二度と訪れることのない遠い遠い"本当の"過去のこと」なのだなあと思いました。

 前述のとおり、『GOTCHA!』初見の後には「最後まで懐古趣味かよ!」という印象を受けていましたが、『スタンド・バイ・ミー』を観た後は考えがまったく変わりました。映画のこのシーンは物語の中盤に出てきて4人はその後も様々な困難を乗り越えて行くのですが、さらに最後の中年になった主人公が出てくるシーンまで合わせると本当に長い時間が経ち、多くの経験をしてきた月日が流れています。何が言いたいのかというと、歳を重ねた主人公や映画を観た私たちからすると『スタンド・バイ・ミー』は遠い昔のことですが、「線路を歩いているときの4人の少年はそうは思ってないよな」とこの時やっと気づいたのです。

 以上のことから私の結論を申し上げますと、実は『GOTCHA!』は懐古趣味でも過去のファンへのサービスでもなくこれからの私たちの物語なのです。だって『GOTCHA!』の4人が遠く向こう側、未知へと続いていく線路の上を歩いているのを目撃したのは"今"(※一か月くらい前)なんだもん。これからどんだけ色々なことがあるのっていう。もういくらか歳を取ってしまったけれど、今まさに私たちはどのような経験をしていくのかわからない冒険をしているのです。勘の悪い私がこのことにやっと気付いたとき、「GOTCHA!」の印象はまったく変わりました。「これまで」だけではなく「これから」の動画でもありました。しかも『スタンド・バイ・ミー』では「GOTCHA!」終盤ほど高い角度から線路上を歩く4人を撮影しているシーンは無いのです。つまり、未来は過去の相似形ですが、完全に同じではないということです。証明完了、Q.E.D.


3. 『GOTCHA!』と『赤緑CMの"あの女の子"』と『謎の男』
 
次に私が書きたいことは、『GOTCHA!』の主人公ポジションの女の子についてです。私自身はまったく気が付かなかったのですが、動画のコメント欄に書かれていた『動画の女の子って赤緑CMの"あの女の子"じゃない???』みたいなコメントを読んで「そんな馬鹿な...」と思ったので確認してみました。


■果たして女の子は赤緑CMの"あの女の子"なのか?(左:『GOTCHA!』、右:『赤緑CM』)

 いや流石に?この件に関しては「過去作品のオマージュが入りがち」「髪の結び方(だけ)が一致している」くらいのふわふわしている根拠しか見つけられなかったのであまり語れることはありません。何か知っている方はぜひ教えてください...。

 次に、動画の最終盤に出てきた「謎の男」(と私が勝手に呼んでいる)についてです。


■動画の最終盤、ものすごく重要そうな場面でモンスターボールを投げる「謎の男」

 画面は冒頭と同じく粗目のドット調に切り替わります。何者か特定しづらい画調で描かれた人物が青空の中でこちら側に向かって手を振り、大きく振りかぶってモンスターボールを投げて暗転、となります。この人物が誰なのか、もしくは別に誰でもないのかが私は気になっています。上の方で「懐古だ懐古だ!」みたいな批判を展開しているくせにポジション的には彼は田尻智ではないか、田尻智だったら嬉しいなとも思ってしまいますが特に根拠もありません(田尻智が右投げであるという情報も知りません)。このことについても、何か知っている方がいたらぜひ教えてほしいと思います。

 話はズレますが小学館から出ている『ポケモンをつくった男 田尻智』という学習まんががとても面白くて良い本なのでおすすめです。本当に良い本です。(Amazonリンク)


4. おわりに
 今回、好きなことだけをダラダラ長く書くといういわゆる"限界感想文"を開陳してしまったわけですが文章を書くことで自分の考えを整理できたので良かったです。以上の文章はすべて私個人の今の感想とか勘違いとかである可能性もあるので、自分で後で読み返したときに誤りが発見できそうなのでそれはそれで面白いのではないかなと思います。ポケモンモチベが上がったり下がったりして無責任極まりない人間ですが、ひとたびまた触れれば「やっぱポケモン最高やな...」ってなれるのでポケモン自体は本当に最高なんだと思います。ブレブレなのは常に自分やで。今後もポケモンには人生を救ってもらおうと思います。

 最後になりますが、素晴らしい曲を作ってくださったBUMP OF CHICKENにも感謝しています。私は熱心なファンではないですが、「天体観測」や「車輪の唄」、「ラフメイカー」や「Ray」、「アリア」や「宝石になった日」など音楽に疎い私の人生の中でも記憶に残っているBUMPの曲はけっこう多くあります。それくらい凄い人たちなのだなと思います。以前、BUMPファンである友人から「藤原基央はなんでもやってみようとするチャレンジャー精神のある人間である」という話を聞きました。そのような考えを持つメンバーの活動とその活動を支持するファンの皆さんの存在が今回の『GOTCHA!』にも繋がったのだと思うのでBUMP OF CHICKENとそのファンの方々にも感謝の念しかありません。