『モンスターハンター』シリーズの伝統的なやり込み要素である『勲章』システム。俺はさまざま存在する勲章について『モンスターハンターワイルズ』を始めてから長いこと自然と授与される(妙に違和感のある表現^^;)のに任せていたが、最近になってようやく勲章集めを目的として積極的に動き始めた。過去いくつものシリーズ作品を通じて一度も勲章をコンプリートすることができないでいた俺。今回こそは綺麗にすべての勲章を集めたい。まだまだ時間はかかりそうだが現在進行形でコツコツと勲章獲得のための実績を積み重ねている最中だ。
そんな勲章集めの過程で特に印象深かった事柄があったので書いておきたい。それは数ある勲章の中の一つ『東の地の探検家』を得るためにレア度6の特産品を探し回っていたときのことだった。
『東の地の探検家』の獲得条件は"レア度6の特産品10種類の取得"だ。元々その中のいくつかはこれまでの道中で採取したことがあったためそこまであらためて苦労するというものでもない。余談だが『東の地の探検家』の獲得条件が"レア度6の特産品10種類の取得"であるのに対して『禁足地』全域に存在するレア度6の特産品は全部で11種類である。なんなんだこの明らかにわざとらしいズレは……。これは少しでも勲章コンプリートの難易度を下げてやろうという開発者側の配慮なのだろうか?
血液型A型の俺にとってこの数字のズレは逆に劇薬となった。いくら『東の地の探検家』が得られたからといって中途半端なところで特産品探しを終えることはできない。俺は最後に残った11個目の特産品を探しに出掛けることにした。
長時間に渡って行われた俺のレア度6の特産品集めマラソン(と言ってもほとんど『休憩』していただけだが^^;) その最後に残ったのは『一夜花の月華粉』というアイテムだった。雅な雰囲気がプンプンする名前であることだけは感じられるが読み方がわからない……
調べてみたところ「いちやばなのげっかふん」と読むらしいこの花は"満月の夜"という非常にユニークな条件の下でしか咲くことがないのだという。へ~そんなロマンチックな花が存在するとは知らなんだ。これまで『ワイルズ』には数々の凝ったギミックによって驚かされてきたがまさかゲーム内の月の満ち欠けが影響を与えているアイテムまであるとは思わなかった。どおりで今まで一度もこの花を見たことがなかったわけだ。
月の満ち欠けの表情は全部で7段階あり、一度『休憩』することで次の1段階に移り変わる。今まで断続的にしか月を見たことがなかったのでランダムに思えていたけどちゃんと順番に満ちては欠けているのだなあ。互いに干渉し合うことのないものとしてこれまでまったく月氏(敬称)のことを気にも留めていなかった手前、急に具体の利益に関わる存在であることを知って緊張する現金な俺。慣れない手つきで満月の日をすっ飛ばしてしまわないように慎重に休憩(?)し、なんとか無事にまさに満月が昇る日の夕方に着地することができた。
俺は陽が完全に落ちて夜になるまでの間、見晴らしの良い『緋の森』エリア17に立ち月が昇る方向を眺めていた。ゲームの中とはいえ、こうして素晴らしい眺望とともにただ夜が来るのを待つ時間のなんと贅沢なことか。とてもじゃないが現実でこんなことはできない。『ワイルズ』やってて本当に良かった……
暮れゆく夕陽の輝きをこれでもかと両目に流し込みながらただぼーっと立ち尽くす独身アラサー男。遠く向こうには"「いやそうはならんやろ」禁足地代表"の風吹き山が見える。相変わらず何があってそうなったのかわからないようなダイナミックな造形をしてるな……。というか今更だが緋の森と『隔ての砂原』って本当に隣り合ってるんだなあ。物心ついた頃から広場から別の広場に移動しようとすると急に意識を失っていつの間にかワープする人生を送ってきたもんだからこの世界が地続きだと知った時の衝撃といったらなかったぜ。そんな寝落ち直前のようなとりとめのないアホな思考を垂れ流している間にいつしか夜の帳が下りていた。
いかんいかん、今回の目的は『一夜花の月華粉』だった。俺はエリア17の滝付近から離れ事前のリサーチ通り一夜花の咲くエリア14へと続く断崖の方へ走った。何せ満月の夜にしか花開かないような奥ゆかしい植物である。地図上でポイントがわかったところで現地へ赴いたらそうそう簡単には見つけられないような小さく可憐な花なのでは……
……ってでっか!(前回と同じような展開で申し訳ない^^;) いや主張がハンパないな! 絶対お前が一夜花じゃん! 画面上には『儚げな花』という表記が出ているがそれはあくまで俺(ハンターの方)の見解であってリアルの俺の印象ではない。あの~すみません。一応……なんですけどもしよろしければ『一夜花の月華粉』を頂きたいのですがいかがでしょうか……? 屈強な成人男性ハンターの背丈とタメを張れるほどの高さと頭よりもデカい花。思わずあらたまってペコペコしてしまうほどに一夜花は俺のイメージからかけ離れた"フィジカル強者"な植物だった。
しかしまあそうは言っても人それぞれ、草花それぞれいろいろあるよな。このデカさも緋の森のわんぱくな大自然基準では並程度かもしれんし。お前ほどのヤツなら別に太陽の下でも胸を張って咲き誇れるとは思うが敢えてこうして独り静かに生きることを選んだのだろう。きっと一夜花には一夜花なりの気風や生き方がある。デカさと儚さって別に矛盾するものでもないしな……。
鬱蒼と茂る森から離れた断崖の上に立ち、誰にも見留められぬ夜にひっそりと咲き何を思う。月光に淡く照らされている美しい一夜花を見つめているうちに俺は柄にもなくムーディな気分になってそう独り言ちるのだった。