彼の理想の田園へ

日記と妄言、活動記録。

【MHWs】神が授けた王の煌き -無言の閃耀-【第77話】

 約一か月前、上位ストーリー中にて勃発した俺とレ・ダウとの戦いの顛末をこのブログで報告した。俺は『禁足地』に君臨する4種の頂点モンスターの中ではレ・ダウが一番好きなので当時の日記は自分でもかなり印象深い話だったことを覚えている。ヤツの攻撃が"テレフォンパンチ"状態(詳しくは第44話を参照!)だったことに加えて俺がわりかし飛竜種戦が得意だったのもありそのレ・ダウ戦は完全勝利と言っていい内容であった。

 時は流れて2025年4月30日(水)。『無言の閃耀』という歴戦王レ・ダウの狩猟がターゲットのイベントクエストが配信された。『歴戦王』とは『モンスターハンター:ワールド』のVer.4.00にて初登場したモンスターのカテゴリーの一つで、通常個体より強力な『歴戦の個体』のさらに上位種にあたる強化個体のことらしい。俺は『ワールド』をほんの触り程度にしか遊んでいなかったので"歴戦王"という言葉にまったく馴染みがなくイマイチ盛り上がり方がわからなかったのだが、『ワールド』にて多くの歴戦王モンスターと渡り合ってきたハンターにとっては今回の歴戦王レ・ダウの実装は「待ってました!」と声が出るようなイベントらしい。

 『歴戦の個体』でも十分に手強いレ・ダウの歴戦王バージョンか、これは相当の覚悟をもって臨まなければ。俺は心身ともに引き締めて『無言の閃耀』に挑戦するための準備に取り掛かった。何を隠そう、先日こちらで紹介した俺にとって初めてのガチ装備(仮)は今回の歴戦王レ・ダウ戦を見据えて用意したものである。これで防具の方は準備万端。武器もまたわざわざこの戦いに照準を合わせて特別な一振りを用意した。それがこちら。

 『緋の森』エリア17の湖のほとりにて俺自らが一本釣りしたダイオウカジキを、職人の謎技術を用いて完璧に凍らせることにより700もの破格の氷属性を宿らせるに至った知る人ぞ知る大剣。その名はレイトウ真カジキ。魚本体のシルエットがそのまま武器になっているという本当はほんのりスベっているが製作者は面白いと思っているタイプの異色の大剣に今回たまたま持っていた氷結・集中珠【3】を組み合わせることによって驚異の氷属性+200を実現した。

 ぶっちゃけ俺は武器の攻撃力や属性ダメージの計算などの知識がからっきしなのでこの"200"という数値が果たしていかほどのものなのかあんまりよくわかっていないが、とにかくひとたびこの大剣を振るえば空気中の水分をも凍結させることはおそらく間違いない。氷属性を最も苦手とするレ・ダウへの有効打となり得るのではないかと思い俺は今回この武器を採用したのだった。

 武器・防具ともに最高のものが揃ったところでいよいよ出陣! 俺は歴戦王レ・ダウの待つ『隔ての砂原』エリア17へ向かった。風吹き山周辺に一次キャンプを構えていないのでエリア17へのアクセスだけでもけっこう時間がかかってしまうのだが、その移動中も俺は未だ見ぬ歴戦王の立ち居振る舞いに思いを馳せていた。果たして歴戦王とは通常個体と比べどれほど強大な存在なのだろうか。そして俺は無事にクエストクリアし生きて帰れるのだろうか。考えるうちに徐々に緊張感が増していった。

 エリア17へ到着した直後、俺はその中央付近にレ・ダウが佇んでいるのを発見した。他の飛竜種と異なる板のような独特の形状をした翼を持つレ・ダウが地面に立っている様子はどことなく三角形のテントのように見えてかわいらしささえ感じる。あれが本当に歴戦王なのだろうか。一見してよく見慣れたレ・ダウのように思えるが

 俺はいつものレ・ダウ戦と同じようにして歴戦王レ・ダウの背後に回り、その尻尾めがけて最初の溜め斬りを振り下ろすところから狩猟を始めた。俺にとっては長い戦いの最初の挨拶程度の感覚だったが、その一発目からレ・ダウが大きくのけぞったため斬ってる俺の方がびっくりしてしまった。予想外に効いているのかはたまたヤツもまた突然の強襲に驚いたのか。真相はわからないがとにかく良いスタートが切れたのは確かである。

 レ・ダウとの戦いが始まってすぐのこと。警戒感MAXで慎重に戦闘に入っていこうとしている俺とは真逆で最初から出し惜しみせずさまざまな技を披露する歴戦王。日ごろ初見のモンスター戦で行うのと同じように時間を使って遠巻きに観察する必要もないほどに歴戦王レ・ダウは短時間でわかりやすく"違い"を見せつけてきた。

 一番わかりやすかったのはフィジカルな物理攻撃の後に発生する小さな落雷だ。多くの技がかなり大振りなレ・ダウの攻撃はその豪快なモーションに反して意外と攻撃判定は小さく、全身を傾けて振りかぶった攻撃を放った後の隙はかなり大きい。通常個体との戦いであればヤツの攻撃後の隙を予測して至近距離に張りつき逆にこちらの攻撃のチャンスにすることができる。レ・ダウ戦の基本となる立ち回りを担保するそんな大きな隙が、なんと歴戦王には存在しなかった。

 歴戦王レ・ダウが翼や尻尾を使って叩いた箇所には、エリア問わず必ず複数の小さな落雷が起きる。この雷の追撃があるせいで通常個体戦でやってきたようなレ・ダウの身体周辺での立ち回りが複雑化し、歴戦王戦においては特に攻撃後の隙を狙うのが難しくなっているのだ。以上の説明だけで伝わるかどうか不安なのでこの状況を格闘ゲームに例えると、空振ったりガードさせたりした場合に大きな隙ができる技をブンブンと振り回す歴戦王レ・ダウはその技を出した直後に隙をフォローするような飛び道具も同時に発生させることができる、みたいな感じである(伝わってほしい) コイツ…自分の大振りな攻撃の弱点を小賢しくもしっかりケアしてやがる!

 俺が着目したのはその"追撃"の発生源である。翼や尻尾を使ったレ・ダウの攻撃はもちろんレ・ダウ自身が繰り出しているものだが、その後の落雷の追加攻撃自体は自然現象でありある意味でレ・ダウの意思とは別に勝手に発生しているものだ(期待しているとは思うが) つまりレ・ダウにとって"落雷バリア"(今命名した)は無料、まさに神が王に授けた祝福の煌きなのである。俺は歴戦王レ・ダウがまったく追加の労力を支払わずに自身の攻撃と攻撃の間の隙を別の攻撃で埋めることによってクエスト全体における"レ・ダウのターン"の密度を飛躍的に高めているのに気づき、感心しながら全力で逃げ惑うしかないのだった。

 なるほど、どおりで通常レ・ダウの攻撃の後には大きな隙があるわけだ。俺は初めてヤツと刃を交えたその時から、"頂点モンスター"という触れ込みで登場したタレント的モンスターでありながらなぜレ・ダウの行動の一つ一つにそれほど脅威を感じなかったのかに納得がいった。キャラクターデザイン的に考えるとなんとなく歴戦王という"フルスペック"の存在が先にあり、そこから逆に間引いていくように性能を調整した結果が通常個体として完成するのではないかと思う。そうでもしないとモンスターの強化個体を考える時に余白というか伸びしろの付け所を用意するのに困ってしまうような気がする。と、あくまでここまですべて素人の俺の想像だが^^;

 一つ一つの技の攻撃力を通常よりも高く設定することで『強化個体』とするだけならばそれほど簡単なことはない。実際に歴戦王レ・ダウはそっち方面の強化もモリモリとされている。のちに俺はヤツを狩猟することで入手できる『煌雷竜の狩猟証γ』を集める道中で何度も何度も体力ほぼMAXの状態から一発の雷撃ビーム(仮称)で魂まで消し炭にされてきた。

 しかし歴戦王レ・ダウの脅威ははそんな単純なものに留まらず、こちら側にレ・ダウ戦の立ち回りを根本から見直す必要性を迫るような"回答"を突きつけてきたのだ。通常個体戦の答えを見つけたハンターに対して歴戦王がその上から対応策を被せる。なんと興味深いメッセージの送り合いだろうか。初めて歴戦王と相対した俺はヤツとの"対話"を楽しむように、いつも以上に慎重に立ち回りながら都度丁寧に回復しとにかく長い時間生き延びることに努めた。

 クエスト開始から20分が経過した。普段の狩りでは起こりえないほどの長丁場になり、流石に俺も"対話"などと気取ったことを言える気分ではなくなっていた。あの~、歴戦王レ・ダウさんですがなんかまだまだ元気そうなんですケド^^; 尻尾の切断でさえかなりの時間を要したほどに体力(耐久値?)が高い眼前のレ・ダウ。既に回復薬グレートが切れ息も絶え絶えになっている俺のことなど意にも介さず、ビッシャンビッシャンと雷が降り注ぐ砂の上で変わらず元気に猛り散らしていた。

 おかしい…明らかにあまりダメージを与えられていないような気がする。そんなに俺が日和ってるわけでもないと思うが。だからと言って他に原因を求めるとなるとそれはもう今回の得物であるレイトウ真カジキしか残っていない。コイツ、本当に効いてんのか?? 冷静に考えてみて気づいたがどうして魚が剣になってんだよ。俺も俺で凍らせたダイオウカジキを当たり前のように「剣です」と言われて出されたもんだから疑問を持つことなく使ってきたが、そもそもの前提に立ち返ってみれば魚が剣になり得るはずがない。どうして俺も反抗せずにすんなりと受け入れてしまっているのか。これだから長いだけの伝統と人間の思い込みというのはまことに怖ろしいのである。

 降り注ぐ雷を自在に活用する『モンスターハンターワイルズ』初めての歴戦王を前にしながら不意に手元の冷凍食材への疑念に脳を支配されてしまった俺。それでも必死の鎬の削り合いを耐え25分が経過した辺りでついにレ・ダウに弱りが見えた。レイトウ真カジキはちゃんと効いていたのである。ようやく、ようやくここまで来た。「あと少し」が見えたからこそ「もうこんなところでは力尽きられない」という気持ちがより強まった。

 空中でふらつきながら別エリアへと飛んでいく歴戦王。俺も必死に後を追う。いかに向こうが弱っていようともちょっとでも連続で攻撃を食らえば瞬く間に力尽きてしまう状況なのはずっと変わっていない。焦るなよ俺…。ここで雑になればあっという間に台無しだ。俺はここに来てリスクを排除するように抜刀溜め斬りの一撃からすぐさま回避行動を取る"ヒットアンドアウェイ"戦法に徹した。これでいい、これでいいんだ…だからいい加減に終わってくれ!

 「天候が変わりそうだよ」愛しのオトモアイルー・オリーヴァがそう呟いた。正直俺はこの時ばかりは「今それどころじゃねえ! こっちはギリギリを耐えてんだ!」という思いでそれを聞き流し、次に何か食らえば確実に力尽きるような体力状況でゴロゴロと砂の上を転げまわっていた。天候が変わる? だから何だというのだ。そういやそもそも今は何期で次は何期に移行するんだ? まさに生きるか死ぬかの瀬戸際にいる俺の脳内にノイズのような疑問がサッと差し込んではすぐに流れていく。今はそんなことどうでもいい。疲労で大きな隙を晒した歴戦王レ・ダウに渾身の溜め斬りを振り下ろす。

 果たしてそれが最後の一撃だった。直後、自動で切り替わるカメラの視点。俺はこの瞬間の劇的な演出の清々しさを味わうためにモンハンをやっていると言っても過言ではないかもしれない。崩れ落ちるレ・ダウ。上空から捉えた歴戦王の亡骸にサッと眩い光が差し込むのが見えた。えっ!? そんな神タイミングある!? まさに歴戦王レ・ダウを討伐したその瞬間、隔ての砂原の季節が豊穣期に移行したのである。

 なんかこれ、今までもちょくちょく起こってきたがそういうドラマティックな演出なのだろうか? それとも完全にたまたまのことなのだろうか? フィニッシュシーンの瞬間までは確かに荒れ狂う異常気象だったのだが、歴戦王レ・ダウが力尽き地面に伏したのと同時に空は晴れ渡り大地が輝きを取り戻したである。この場面に立ち会うと俺はどうしようもなく嬉しくなり形容しがたい達成感に包まれるので"立ち合い得"ではあるのだが果たしてこれは単なる偶然なのだろうか。他のハンターが同じクエストで同じ経験をしているのか確かめる方法が無いのでいつまでもこの疑問は解消しないままなのだった。

 そんなプチ奇跡もありつつ俺はなんとか死闘の末に歴戦王レ・ダウを討伐した。いや~本当に強かった。体力・攻撃力が単純に超強化されていたのもあり、新しい動きで翻弄してきたのもあり、邪悪な落雷バリアで隙をケアしてきたのもありでまったく新しいレ・ダウの姿を見られてとても楽しかった。足下への電撃光線(もう名前なんでもいい)の火力が高過ぎたのだけ若干イラっとさせられたが、そもそも俺はレ・ダウが好きなので個人的には「よくぞここまで強くなってくれた」という感動の方が勝った感じがする。

 この先また新たな歴戦王モンスターが現れるのだろうか。そうだとすると次は誰になるのだろうか。レ・ダウを見るに歴戦王がただ単純にさまざまな数値を上げただけではなく我々ハンターに新たな遊びを提供してくれる手強い存在であることがわかったので、誰が来るにせよ今後の追加コンテンツでまた歴戦王に挑戦するのが今から楽しみである。