しばらく前、『氷霧の断崖』にて明らかに様子のおかしいイャンクックが目撃された。基本的には温暖な環境に生息するイャンクックが氷霧の断崖にいること自体がそもそもおかしいのだが、件の個体は黒々とした息を吐き目が赤く光っているなど通常のイャンクックには見られない禍々しい特徴を有していた。その挙動も常軌を逸して激しく放置しておくにはあまりに危険と判断されたため、発見後間もなくしてハンター(俺のこと)により討伐されたのだった――
狂竜化モンスター。『狂竜ウイルス』と呼ばれる正体不明の物質に感染し『狂竜症』を発症したモンスターの俗称である。狂竜化したモンスターには先述したような症状と本来の生態では考えられないほどの凶暴性が見られるようになる。『モンスターハンター4』にて初めて確認されたこの恐ろしい感染症は俺の古い記憶の中にも残っていた。一部地域にのみ存在する地方病のようなものだと認識していたのだが……
狂竜化したイャンクックを目撃して以来、『モンスターハンターワイルズ』の舞台である『禁足地』にもにわかに狂竜症の感染原因である粉塵を飛散させるゴア・マガラが生息しているのではないかという疑惑が浮上していた。狂竜症研究の専門家であるファビウスがわざわざ禁足地まで戻り調査の陣頭指揮を執っている様子を見るにどうやらかなり確度が高そうである。俺は事態を深刻に受け止める調査隊の面々を前にして(ゴア・マガラってなんだっけ……)(狂竜症ってなんだっけ……)と内心思いながらも「これは……大変なことになったな」と神妙な顔をして同調することに徹していた(いつもの)
狂竜症の被害を被っていたのはイャンクックら外界のモンスターだけではない。なんと同族の群れを離れて暮らす世捨て人ならぬ"世捨てモンスター"的モリバー・ルロウもまた狂竜症と思われる症状に苦しんでいたのである。マジか、いつの間にかそんなことになっていたとは。実はルロウの狂竜症発症の兆候は既にあった。少し前に彼の体調が若干悪いのを見かけた際、まったく察しの悪い俺は「氷霧の断崖も寒いですからね~」などとテキトーな気候の話をして不調の原因が風邪であるかのように断定していた。まさかあれが本件の伏線だったとは……(気取ってねえでもっとあったかいところで暮らせよ)なんて思っていてスマンかった^^;
このように元から野生100%で話の通じぬモンスターのみならず、禁足地で出会ったかけがえのない友人であるモリバーにも被害が及んでいるのは耐えがたい。俺馬鹿だからファビウスら学者方の抱く危機感がイマイチよくわかんねーけどよ、仲間が苦しんでるなら放っておけねえよ! そんな少年漫画の主人公のようなモチベーションを持って俺は本格的に狂竜ウイルス蔓延の実態調査に乗り込むのであった。
狂竜症の原因があると思われる氷霧の断崖に降り立つと、そこには普段の学者然とした衣装ではないゴテゴテの重装備を身に纏ったファビウスが待っていた。おお、今まで見てきたのとは180度異なる雰囲気の彼の姿はなんというか感慨深いものがある。なんつーか、かっこいいじゃん?(どの立場だ) やっぱり俺はファンタジー風の装備よりも金属をふんだんに使った無骨な防具の方が好きなのである。
ファビウスについては「『4』での"筆頭ランサー"にあたる人物なのでは?」と『ワイルズ』発売前から囁かれていたがこの風貌を見るに間違いないだろう。彼もまたかつては優秀なハンターだったのだなあ。こんな風に特にギルドと関わりの深い仕事をしてきたハンターというのはリタイアした後は管理職に就いたり学術院の研究所に勤めたりすることが多いのだろうか。俺みたいな気分屋でテキトーに好きなことをやってるほぼフリーターみたいなハンターでは歩むことのできないキャリアだろうな(笑) 引退後はせいぜい個人的な体験記を出版するくらいが関の山だろう。
今回の狂竜症蔓延の実態調査、もっと言うとその原因であるゴア・マガラ確認の調査にはファビウスが同行する。ストーリー上のクエストにてNPCハンターが同行する流れに入ると、いよいよこの先はヤバいんだなという気配を感じて緊張感が増す。こんなん絶対ゴア・マガラいますやん……そして狩猟の流れになりますやん……。俺は今までの経験を踏まえてこの先に待つ過酷な展開を予見した。急にゴア・マガラと戦えって言われても俺全然覚えてねえよ……
氷霧の断崖を進んでゆくと、現地では既にファビウスの部下のランサー2名(レックス、コーディ)が警戒にあたっていた。寒いだろうにお疲れ様です。昔、ほんの一時期だけ極寒の深夜に屋外で立ち尽くす仕事(?)をしていたことを思い出した。ほとんど忘れていた記憶だがまさかそれが『ワイルズ』にてNPCへの感情移入の助けになるとは。人生何が役に立つのかわからないものである。
しかし彼らの職務の過酷さの所以は寒い中ただつっ立っていることのみではない。俺たちが現場へ到着した直後、また例の狂竜化したイャンクックに加え新たに狂竜化したネルスキュラが勢いよく乱入してきた。普段の様子からは考えられないような鬼気迫る表情でまさに狂ったように暴れる2頭。例えるならば10kmマラソンの開始直後から100m競走の勢いで全力で走っているような、後のことをまったく考えていない感じの常軌を逸した行動である。
当然そんなのっけから破綻したマラソンでは両者揃って仲良くゴール、などとなるはずもなく早々にイャンクックが全体重をかけてネルスキュラを踏みつけ、抵抗できなくなったところで脚の1本を食いちぎり絶命させるというお茶の間には絶対に流せない衝撃のバッドエンドを迎えた。最初から最後まで無茶苦茶過ぎる。2000年代前半の深夜アニメか。
じゃあ俺たちが対処すべきは勝ち残った狂竜化イャンクックか、よかったよかった^^ ……とそんなストレートに進むほど事態は甘くなかった。直後、ギャグかと思えるほどの尋常でない勢いで画面横からスパーン! とカットインする大きな黒い影。先ほどまで暴れに暴れていたイャンクックを造作もなく足蹴にして息の根を止めてしまった。開幕から圧倒的な力の差を見せつけたその黒い影こそ件の元凶であるゴア・マガラであった。
で、出たー!(◎∀◎;) ゴア・マガラだ! 久し振りに見た! 『4』にて初めて戦った時から他のモンスターに類を見ない独特の動きや攻撃方法に惑わされ、当時一気に俺の中の"トラウマモンスターtop5"(まったく意味の無いランキング)にランクインしたのがこのゴア・マガラである。なんか前脚がとてつもなく発達してるし謎成分の黒いブレスは地面を這ってきたりヤツの正面を取りまくように爆発したりするし飛行能力が高いのに閃光玉も効かないし……。ヤツは明らかにそれまでの俺の経験の枠の外にいた。『4』は対応ハードが初めて